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大阪家庭裁判所 昭和48年(少)6960号 決定 1973年11月12日

少年 D・S子(昭三四・一〇・一七生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年はA子と共謀して、昭和四八年八月一八日午後一時頃、大阪市東住吉区○○×丁目株式会社○○駒川店において、同店々長○見○出○管理にかかるスポーツシヤツ外一点(計五、二八〇円)を窃取したものである。

(適条)

刑法二三五条(少年法三条一項二号)、刑法六〇条。

(処遇理由)

1  本件は大阪市中央児童相談所長から送致されたもので、その送致事由の要旨は「少年は中学一年生の頃から度々家出し、シンナー、ボンド遊び、不純異性交遊にふけり保護者(母)の監護能力もないため、昭和四七年一〇月三日付にて教護院である修徳学院に収容保護を加えたが、昭和四八年一〇月六日までの間六回にわたり無断外出をくり返し、その度にその方法は功妙かつ悪質になり、無断外出中においても性非行、窃盗等の非行がみられ、その非行性はますますエスカレートしていく傾向にあつて、本件の上記非行事実を犯すに至つたものであり、その非行内容からしてもはや上記開放施設での教護は困難であり、又少年は本件非行についての反省の態度も薄くこのまま放置すれば再非行の虞があるので、その行動の自由を拘束しうる国立教護院の施設に収容して教護するための強制措置を求める。」というものであつて、調査の結果によれば上記送致事由のとおりの事実が認められ、母のみの欠損家庭においては同保護者の監護能力には期待できない状態にあるので、少年の非行性は強力な施設に収容して教護、矯正を図る必要があるものと認められる。

2  ところで少年の年齢、資質、性格、経歴、家族事情、施設からの度重なる無断外出、放浪癖及びその間の非行の回数態様など諸般の事情から判断すれば、少年の非行性、反社会性はかなり根深いものがあり、もはや教護院における教護の限界を越えているものと認められる(たとえ教護院において適宜強制措置をとつたとしても)ばかりか少年を本件申請のように遠隔地の教護院(栃木県所在、きぬ川学園)に送るより、保護者の住居地に近い初等少年院に収容保護を加え、少年と保護者及び中学校の生活指導部長(少年が在学中の先生)等との連絡を密にした方が少年の健全な育成と保護の万全を期する上により適切であると思料されるので、少年を初等少年院に送致することとする。

3  以上のとおりであるから、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項及び少年院法二条二項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 日野忠和)

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